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2012年2月20日 (月)

三谷幸喜作・演出「90ミニッツ」@PARCO劇場

川のある街が好きな私が八橋壮太朗です。

ついにこの日がやってきました。「笑の大学」から15年、三谷幸喜作、西村雅彦&近藤芳正の二人芝居であります。
チケットが取れないのなんの。度重なる抽選に外れまくり、なんとか最後の追加公演でパルコ劇場の席を手中におさめました。

公式Webサイトより引用です。

作・演出 三谷幸喜
出演 西村雅彦 近藤芳正

「笑の大学」から15年。
三谷幸喜50周年大感謝祭のラストを飾るのは
あの二人の男が舞台上で火花を散らす90分一本勝負のドラマ
2011年、三谷幸喜生誕50周年スペシャル「三谷幸喜大感謝祭」そのアニバーサリー・イヤーのラストを飾るのは、『笑の大学』から15年振りとなる西村雅彦×近藤芳正出演の二人芝居です。
『笑の大学』は第二次大戦中の表現における「検閲」という国のシステムを背景に、その「検閲する側」の検閲官と「検閲される側」の喜劇作家との会話の中に、三谷幸喜が探求しつづける「笑い」をテーマに「笑い」が人生に与える豊かさと「笑い」を描く作家の苦悩を描き、傑作ドラマを生み出しました。

今回のテーマは「倫理」です。
それぞれがそれぞれの立場で「正しい」選択をしなければならない。しかし、それは一方から見れば、「やってはいけないこと」であったりします。例えば、職業であったり、あるいは宗教や、家の家訓、国のイデオロギーの違いでも起こりうること。しかし、時と場合によっては、その「倫理」を越えたところで、行動しなければならないこともあるかもしれません。
三谷幸喜が描く二人の男性がそれぞれの「倫理」、つまり「立場」からぶつかり、葛藤する男二人が言葉でぶつかる会話劇です。どうぞご期待下さい!

劇場に入って、扉の横にある掲示を見て「ニヤ」っとしました。上演時間「90分」。そりゃそうだよな、と。
今回は、人気公演にもかかわらず前のほうの中央付近に座ることができました。パルコ劇場は、前半分に座らないと遠くてしょうがない。後ろの席は甲子園で野球を見ている気分になります。細かい芝居はわかりません…。
ステージを見ると、中央にアクリル製のような床が10m四方ぐらいに展開されている。その上には、上手側にちょっとメタリックな事務机と椅子、下手側に待合室にありそうな簡易なソファが配置されています。そして、その空間をカーテンのようなもので囲われています。このカーテン、レールから1mほどロープで吊られていて、病院のベッドを囲んでいるレールを連想する。基本的に、それだけのシンプルな環境です。

さて、開演です。
「基本的に、それだけのシンプルな環境」ですが、ステージの中央の最も客席側に、1本の細い水の滝が出てきました。なんか、PARCO劇場って水使う人多くないですか…(笑)。そんな数多く見ない私でも、何回目なんだろうか…。
そして病院のカーテンみたいと言いましたが、白衣の西村雅彦が電話しているシーンから始まります。病院でした。もろもろあって、奥から登場する近藤芳正。
ストーリーは、とってもシンプル。
普段は、とある地方に住む近藤芳正。都心に出てきていた息子が交通事故に巻き込まれて病院に運ばれた。たまたま都心近くに出てきていた近藤芳正は、運よくすぐに病院にかけつけることができた。病院で待っていたのは西村雅彦が演じる整形外科の副部長。息子は外科手術を受ければ、助かる状態。西村雅彦は近藤芳正に手術の同意書を突きつける。サインしてくれと。もしサインをすると、手術をするために輸血も行うことになる。しかし、近藤芳正の家庭が暮らしている地域社会は、輸血を否定するポリシーを持つのであったため、サインすることができない。手術をすれば助かるが、輸血をしないのであれば手術もできず、数時間で死んでしまう。なんとかサインをさせるように迫る西村雅彦。サインを拒み続ける近藤芳正。時間のリミットが迫る中、果たして手術をすることになるのか?
この、サインをするかどうか、手術をするのかどうか、の押し問答が病院の一室で繰り広げられる会話劇。

もう、三谷ファンというか「笑の大学」ファンとしては、満足しないわけがない、開演する前から満足しているわけです。基本的にALL OKという。笑いの要素も、期待を裏切りません。ありがとう三谷幸喜。ありがとう西村雅彦。ありがとう近藤芳正。スタッフ名をみても、見覚えのあるラインナップですが、みなさんありがとうです。

それでも、愛のあるツッコミをしておきたくなるのが私です。どんなにファンでも信者になることはありません…。
ここのところ感じていたことが、やっぱりか!と思ったのは、「三谷幸喜作・演出」より「三谷幸喜作・山田和也演出」のほうが好きなんですよね。以前から、いろんなところで三谷さんは演出もやりたいんだと言っていましたが、個人的には「出口なし!」ぐらいしかグっと来ないかも。恋愛話というか女性の描き方にクセのある三谷さん。そのあたりからも思うのは、かなりシャイなんじゃないかと思うんですよ。芝居作りに関しては頑固なんだと思おうけど、サービス精神を抑えちゃうというのだろうか、ホントは1分に1回は笑える濃密で緻密なツクリにできるのに、そういうのやることにシャイになっちゃっているんじゃないかと思う。できるからこそ、そこは置いておいて、もっと作品作り・芝居作りに没頭しちゃうんだろうな。
それが勝手に私が思う三谷さんの芝居であります。
なので、否定するという意味ではなくて、山田和也演出「も」見たい!と思うのですよ…。

そのほかにも思うことはあって。
「笑の大学」と比較されることは、明らかだと思います。しかし、比較すると「90ミニッツ」は説得力が無い。
その理由も明らかで、「笑の大学」は戦時中にドSな国家権力の末端である検閲官(西村雅彦)と、書いても書いても台本を変更するように迫られる劇団の座付き作家(近藤芳正)。検閲官が圧力をかける立場が明確だし、なんと言っても「座付き作家」「台本の変更を迫られる」のは三谷自身そのもの。こんなに説得力が溢れるのが「笑の大学」でした。説得力があるから、二人芝居で巻き起こる二人の緊張感・緊迫感がハンパない。笑いの要素がなくてもアツい芝居でした。
今回の「90ミニッツ」は、その緊張感や説得力が弱い。近藤芳正の息子を手術しないと死んでしまう、というところが緊張感の源泉になっています。しかし、対立するはずの二人は、「手術を受けさせたい」という大きな欲求がピッタリ一致している。二人の欲求を邪魔する、お互いの「エゴ」が、どうも小さい。本当にエゴで悩んでいるように見えない。医師のエゴは常識的なエゴだし、近藤芳正のエゴは、「輸血」に対する倫理観なんだけれど、その倫理観の強さの裏づけが、ぜんぜん無くて説得力に欠ける。二人の大きなゴールが一致しているので、小さなエゴを対立させるところが、なんともチマチマした感じに見えてしまう。
すると、この芝居の見せ所はなにかと言うと、二人の会話の、言葉遊び。詭弁の応酬。いったい、二人のエゴを、どう決着させるのか。ここが最大の楽しむ部分になります。ここに意識を集中して、めいっぱい楽しむことができるのかが、評価の分かれ目でしょう。

正直、説得力や緊迫感は求めなくてもいいけど、せめて見せ所の言葉遊びは、もっと濃密にしてほしかった。なぜなら、それができる人だから!
好きだからこそハードルが高いという、ファン心理なんですが、やっぱり演出は他の人に任せて、その演出家とブツかることでクオリティが上がる、という結果が嬉しいと思う次第であります。
パルコにとっての金の成る木になってしまっているようで、悔しい気分。
なにも、昔の三谷作品が良いから、「昔のようにしてほしい」なんて思っているわけではありません。
今の時代や年齢でしか作れないものもあるし、旧態依然なものを追い求めるのが良いとも思わない。
それならば、パルコと決別してみることこそ、新しい芝居作りにチャレンジできるんじゃないかと私は思います。

三谷さんは純度の高い「作品作り」に向かっているとしか思えない。
アテ書きの「らしさ」とか、観客にどう見せるか、という意識よりも、作品として、同業者にどう思われるかという観点が強くなっていると思う。
世間にあふれている、観客に媚びる映画やテレビは見ると失笑してしまうわけですが。三谷さんは逆にもうちょっと客(しかも私のようなレベルの低い客)に媚びる要素を少し意識してほしいです。

これだけ書いておいて何なんですが、西村雅彦と近藤芳正、この二人芝居はスバラシイ。パワーいっぱいに演じてる。それは見ていてよく分かる。とくに近藤芳正さんはアツい人なんだろうなあ、と思った。ダンダンブエノ以来だったかな、近藤さん見たのは。あのときはユルかったけど…。西村さんは余裕なのか頑張っているのか読み取れないですね。そういう意味で安心して見られました。

あ、そうだ。また、地震でけっこう揺れました。パルコ劇場で見てるときに地震を食らうのは2度目。今回も吊り照明がキイキイ音を立てる。パルコ劇場って、私は相性悪いんです…。。

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